COLUMN
コラム
SaaS関連の気になりすぎるコラム
SES業界における人材ミスマッチ問題—AIで解決した成功事例

SES業界(システムエンジニアリングサービス)では、人材のミスマッチが深刻な課題となっています。 国内のIT市場規模は2021年度時点で約13兆5500億円に達し、2024年度には14兆6000億円規模に拡大すると予測されています。しかし、経済産業省の調査では、2030年までに最大約79万人のIT人材不足が指摘されており、優秀なエンジニアの確保と適材適所の配置がますます重要になっています。 本コラムでは、SES業界における人材ミスマッチの原因と影響を整理し、AIマッチング技術を活用した解決策とその効果、成功事例について解説します。
1SES業界の人材ミスマッチ問題の現状
SES業界では、プロジェクトの要求とエンジニアのスキルや経験が噛み合わない「人材ミスマッチ」が頻発しています。
参考:https://hrtech-guide.co.jp/ses/marketsize/
市場が拡大する中で案件数も増加していますが、それに人材配置が追いつかず、以下のような課題が生じています。
適材適所の配置が困難
- 短期間で多数の案件とエンジニアをマッチングする必要があり、担当者の経験や勘に頼った配置では限界がある
- 専門性が不足した人材が案件にアサインされたり、スキル過多な人材が簡単な案件に割り当てられるなどのミスマッチが起こりうる
属人的・手作業のマッチング
- 従来は、多くのSES企業ではExcel管理やメール、電話での個別連絡により、マッチング業務を行っていた
- 担当者の記憶や、人的ネットワークに頼る属人的な体制では、人材情報や案件情報を十分に活用しきれず、見落としや情報共有不足によってミスマッチを招きがち
マッチング業務の工数増大
- 案件数が増えるほど、1件1件の照合、連絡にかかる工数(作業時間)は膨大になる
- 人手での対応には限界があり、特に複数の案件を同時進行する場合、スケジュール調整や書類対応に追われて肝心のマッチング精度確保が難しくなる状況
人材要件の複雑化
- クライアントの求めるスキルセットや経験が高度化・多様化しているため、条件に合致する人材を探し出すのが困難
- 必要なスキル・経験・稼働時期など条件を総合的に勘案するには、人間の判断だけでは限界があり、結果的に要件とのズレが生じることがある
2AIマッチングによる解決策
上記のような原因から、SES業界では、ミスマッチによるプロジェクトの非効率化(追加の教育コストや手戻り作業)や人材の早期離脱(ミスマッチによるモチベ低下)が問題視されています。
では、これらの課題に対してどのような解決策があるのでしょうか?その1つが、「AIを活用したマッチングシステム」の導入です。
AIマッチングとは?
「AIマッチング」とは、人工知能(AI)技術を活用して人材と案件を自動でマッチングする仕組みです。
従来は担当者の手作業に頼っていたマッチング作業を、AIが大量のデータ分析によってサポートします。
具体的には、
・履歴書やスキルシート、案件の要件定義書などのテキスト情報をAIが解析
・適合度の高い組み合わせを高速に提案
といったサポート体制です。
高度なアルゴリズムにより、経験年数やスキルセットだけでなく、過去のプロジェクト実績や志向性といった要素も考慮した総合的なマッチングが可能です。
AIマッチングの仕組み(フローとステップ)
AIマッチングシステムがどのように人材と案件をマッチングするのか、その基本フローをステップごとに見てみましょう。
- データ収集
まず、システムに人材プロフィール情報(スキルシート、経歴、資格など)と案件情報(必要なスキル要件、業務内容、期間など)を入力・蓄積します。複数のエンジニアやプロジェクトのデータを一元管理しておくことで、AIが参照できる土台を作ります。
- 情報解析(NLPによる分析)続いて、AIが蓄積データを解析します。ここで使われるのがNLP(自然言語処理)技術です。
人材の自己PR文や職務経歴書、案件の要件定義といったテキストを機械が読み取り、「Java経験5年」「AWS知識あり」「金融業界プロジェクト経験」などのキーワードやスキルを抽出します。
これにより、人と案件それぞれの特徴が数値化・構造化されます。
- マッチング条件の抽出
- 次に、案件側の条件と人材側のスキルを照合し、マッチングのための評価指標を算出します。
例えば、案件に必要なスキルセットと人材の保有スキルの重なり具合、過去の類似案件での実績、希望単価や勤務地など様々な要素をスコアリングします。
AIは過去の成功・失敗データも学習しており、どの要素がマッチング成功に寄与するかを考慮したアルゴリズムで評価します。
- 候補リストの自動提示
- 分析の結果、マッチ度の高い候補者がシステム上にリストアップされます。
各候補ごとに適合度を示すスコアや%値が表示され、担当者はそのスコアを参考に最適な人材を選定できます。
- 結果の確認、調整
- 提示された候補者リストに対し、最終的な人選を行います。
担当者は、AIの提案を参考にしつつ、面談での印象など定性的な情報も加味して決定します。
必要に応じて、条件を調整した再マッチングも即座に可能です。AIマッチングシステムは使えば使うほどデータが蓄積し精度が向上するため、運用を通じてよりマッチング制度が洗練されていきます。
以上のステップにより、AIマッチングは、「情報の分析」→「候補抽出」→「高マッチ率の候補提示」という一連の流れで、人材マッチングを自動化・高速化します。
AIマッチング導入のメリット
AIマッチングを活用することで、SES企業は以下のようなメリットを得られます。
- マッチング精度の向上
AIは人間では見落としがちな膨大な情報を分析し、適材適所の候補者を提示します。
過去のプロジェクトデータを学習することで「このスキルセットの人はこの種の案件で成果を出しやすい」といったパターンも考慮可能です。
その結果、ミスマッチの減少につながり、プロジェクト成功率が高まります。
- 業務工数の大幅削減
マッチングにかかる手作業の多くが自動化されるため、担当者の作業時間が劇的に減ります。
ある中堅SES企業では、AIマッチングシステム導入後にマッチング業務の工数を80%以上削減することに成功しました。
人手で数日かかっていた候補者選定がボタン一つで完了し、担当者は空いた時間をクライアント対応や戦略立案に充てられます。
- マッチング件数・スピードの増加
自動化により短時間で多くの案件に対応できるようになります。
前述の企業では、こなせる案件数が飛躍的に増え、マッチング件数が従来比5倍に増加しました。
これにより機会損失を防ぎ、より多くの案件を受注できるようになります。またマッチングに要する時間も短縮されるため、クライアントへの提案スピードが向上し競合優位性にもつながります。
- コスト削減
業務効率化によって人件費や外注費の削減効果も得られます。
特に、採用マッチングの分野では、AIによりスクリーニングや候補選定を自動化することで、採用コストを65%削減した事例もあります。
従来は、エージェント会社に支払っていた紹介料や、非効率な採用フローにかかっていた費用を大幅に圧縮できます。
- 属人化の解消、ナレッジ蓄積
システム上にマッチングの履歴データが蓄積されるため、「誰が担当しても同じ水準のマッチングが可能」になります。
ベテラン社員の頭の中にあったノウハウもデータとして共有され、組織全体で活用できるようになります。
新人でも過去データをもとに的確な人選ができるため、組織の安定性が増します。
3AIマッチング採用管理が解決するポイント
数あるAIマッチングツールの中でも、SES業界に特化してリリースしたのが、Air Admin8シリーズの「AIマッチング採用管理」です。
「AIマッチング採用管理」は、
- 営業支援(SFA/CRM)から採用管理(ATS)
- マッチング管理
- 労務管理
といったSESビジネスの全プロセスを一元管理できる統合プラットフォームとなっています。
以下、Air Admin8「AIマッチング採用管理」ならではの強みを解説します。
人材データと案件データの一元管理による高精度マッチング
Air Admin8では顧客・案件情報とエンジニア人材情報が一つのシステムに統合されています。
これにより、従来別々に管理していたデータを横断的に活用でき、AIがフルにマッチングの機会を最大化します。
AIマッチング機能により、希望条件に沿う人材同士を自動マッチングし、かつては時間を要していた候補探索・提案作業もわずか1クリックで完了します。
複数システム併用によるデータ分散や手作業の手間を解消し、人材のミスマッチ防止と提案スピード向上を同時に実現します。
案件自動レコメンドとスキル適合度評価
システムに蓄積されたデータを活かし、エンジニアのスキルプロファイルに合致した新着案件を自動でレコメンドしたり、逆に案件に最適な人材候補を瞬時にリストアップすることが可能です。
適合度のイメージ
AIがスキルマッチ度をスコア表示してくれるため、提案の優先度判断も容易です。
これらの機能により、「募集案件はあるのに適合する要員を探せない」「候補者はいるのに提案できる案件が見つからない」といったミスマッチ機会そのものを減らすことができます。
また、常に最新の案件動向・スキル動向がデータベースに反映されるため、クライアント要件の変化にもリアルタイムで対応可能です。
高いカスタマイズ性と使いやすさ
Air Admin8の「AIマッチング採用管理」は、SES企業ごとの業務フローに合わせて柔軟にカスタマイズ可能な設計になっています。
自社の運用にフィットする項目設定やマッチング条件のチューニングができるため、「導入したシステムが自社業務に合わない」という事態を避けられます。
操作性にもこだわっており、直感的なUIとワンクリックでの帳票作成など使い勝手も良好です。この高いユーザビリティによりシステム運用の属人化も防止し、組織全体で有効活用しやすいのが強みです。
4AIマッチング活用の成功事例
AIマッチングを導入することで具体的にどのような成果が得られるのか、SES業界の企業における成功事例を見てみましょう。
以下に、当社システムを導入いただいた企業の実例を2つ紹介します(詳細は当社の導入事例ページでも紹介しています)。
事例1: マッチング数5倍&工数80%削減 – 中堅SES企業A社
A社(官公庁向け開発・保守を展開)では、従来Excelとメールで案件とエンジニアのマッチング管理を行っていました。
担当者個人の記憶に頼った属人的運用で、事業拡大に伴い対応しきれない状況となっていたため、弊社のAIマッチングシステムを導入。結果、以下のような効果を実感いただいております。
- マッチング件数の大幅増加
システム導入により作業時間が大幅短縮され、担当者一人あたりがこなせる案件数が飛躍的に増加しました。
その結果、マッチング数が従来の5倍に激増し、取りこぼしていた案件も確実にフォローできるようになりました。
- 業務工数の削減
マッチング業務が自動化・簡素化されたことで、手作業に費やしていた時間が劇的に圧縮されました。
全体のマッチング業務工数は80%以上削減され、日常的なマッチング作業に追われていた営業担当者の負担が大きく軽減されました。
事例2: 採用コスト65%削減 – 大手SES企業B社
B社(全国に支店展開するSES企業)では、中途採用や派遣社員の採用業務にAIマッチングを活用しました。
支店ごとに求める人材像が異なり調整に時間がかかっていたこと、採用業務を人材紹介会社に外注していたためコストが高騰していたことが課題でした。
そこで、採用管理プロセスにAIマッチングを導入し、内製化を推進した結果、次のような成果が得られました。
- 採用コストの大幅削減
内製化により、人材紹介会社への手数料や求人媒体コストが削減されました。結果として、採用関連コストを65%削減することに成功しました。
例えば、従来100万円かかっていた採用に35万円程度しかかからなくなった計算で、大幅な経費圧縮につながっています。
- 業務プロセスの標準化と見える化
システム導入後は、「応募~選考~採用」に至る一連のプロセスが可視化され、各支店間で進捗状況をリアルタイムに共有できるようになりました。
PDCAサイクルを確実に回せるようになり、どのフェーズでボトルネックが発生しているか分析して改善につなげることも容易になっています。
以上の事例からもお分かりいただけるように、AIマッチングの導入によって「より多くの案件を、より少ない工数で、的確に回せる」ようになります。
人材ミスマッチの解消のみならず、業績向上やコスト削減といった経営面でのメリットも大きいことが実証されています。
5まとめ
SES業界における人材ミスマッチ問題は、従来のやり方(人の経験と勘)だけでは対処が難しくなっています。
案件の高度化・多様化、人材競争の激化に対応するためには、AIマッチングのようなテクノロジー活用が今後ますます鍵を握るでしょう。
実際に、多くの企業がAIマッチングを取り入れることで、「工数削減」と「マッチング精度向上」を両立し、大きな成果を上げ始めています。
当社の提供する「AIマッチング採用管理」システムでも、人材情報と案件情報を活用した高度なマッチング機能により、SES企業の業務効率化と適材適所の実現を支援しています。
興味のある方は、ぜひ当社製品紹介ページ(「AIマッチング採用管理」)もご覧ください。
AI技術を上手に取り入れ、人材マッチングの質とスピードを高めることで、ミスマッチのない健全なSESビジネスの成長につなげていきましょう。
コラム一覧に戻る

株式会社AirAdmin8 クラウド事業本部 マーケティングG | 銀行での融資営業経験を経て、異色のIT業界へ転身。データサイエンティストとして、経営課題・現場課題解決・AI実用化に取り組む。